漆はウルシノキから樹液を採取して、それを加工して作った天然樹脂塗料です。ケヤキや桜の木を削って作られた器に、熟練の職人が漆を何度も塗り重ねることで生み出されるのが、日本の伝統工芸品「漆器」となります。そして、漆器作りには漆に牛乳を混ぜ込む職人技があるんです。
牛乳を入れる匠の技
漆器作りの工程は、まず漆にとの粉(山の土)と地の粉(珪藻土)を混ぜて強度を増し、木地全体に塗る下地塗りという作業をします。こうすることで丈夫な下地が出来ます。この作業を合計15~20回、約1か月繰り返します。
下地を作ったら中塗り作業になります。ここでは漆を薄く全体に満遍なく塗っていきます。漆は塗れば塗るほど器が硬くなるので、より丈夫にするための過程となります。
中塗り⇒乾燥⇒磨きを10日間繰り返したあとに牛乳を入れます。漆に牛乳を入れると粘り気がでて独特な風合いの漆器となります。これは漆に含まれるウルシオールが、牛乳のたんぱく質と反応するからなんです。
このようにしてできた漆を”絞漆”といいます。純粋な漆がさらさらなのに対して、絞漆はネバネバとなります。絞漆は刷毛で塗ったあとをそのまま残す刷毛目塗りという技法や、器の裏面などで傷を目立たなくするタタキ塗りに使われます。
牛乳のほかにも卵白や豆腐を混ぜることもあります。たんぱく質を多く含むので牛乳と同様に風合いが出ます。これらの技法は、多くの職人が用いる伝統技法なんです。